去年2011年の夏の終わりの一時期に物議を醸したAndroidアプリがありました。 その名前を カレログ と言います。 名は体を表す、カレログのカレは即ち 彼氏の彼であって交際しているカップルの男性側を指し示します。 そしてログとは元は航海用語で日記を意味するものが 後にコンピュータ用語に転用された言葉で記録を意味します。 約めて言えばカレログとは 彼氏の行動を記録するアプリ と言うことになります。
カレログとは?
Androidスマートフォンは小さなコンピュータである上に ほとんどの機種がGPSを搭載していますから 様々なことがプログラム次第で可能になります。 例えば以下アプリをインストールしたスマホの
- 現在地情報
- バッテリー残量
- アプリケーション一覧
- 通話記録
さて、このスマホ所有者に秘密裏に取られた本人の行動記録、 問題は…
誰が見るのかであってそれはご想像通り、 彼女が最も妥当でしょう。 この名前と機能からして一般的な使用法として予想されるのは 彼女が彼氏の行動を監視するために 彼氏のAndroidスマホにこっそりとインストールして於いて 後は自分のPCから逐一彼の一挙手一投足を追う、と言う寸法です。
カレログのビジネスモデル
このアプリは月525円程の使用料が掛かりました。 なかなか有料のアプリは難しいと言われる中、 提供側としては自信があったのでしょう、 上に挙げた採取可能な記録の4番の 通話記録 の通知の閲覧には月1,980円からの プレミアム会員 になる必要がありました。 しかしこれなど本会員になるくらいであればプレミアム会員にならない方の方が 少ないのではないのかと思えるくらいことの是非は抜きにして 形態としては有効な構成であったでしょう。
どうでしょう、この興信所も吃驚のスマホアプリ、 これなら仕事も博打も浮気も何もかも彼女に筒抜け、 従って世の男性は震え上がりました。 物議を醸すのも致し方無し、と言った印象があります。 需要も有り、ビジネスモデルも有効とあっても どうにも世間から問題視されてはなかなか運営は難しいものがあったでしょう。
カレログ騒動を時系列で追う
Wikipediaにもカレログは項目立てられていることからも注目度が高いのが分かります。 その内容からはカレログ騒動の顛末を時系列で追うことが出来ます。 以下に列挙して見ましょう。
- 2011年8月29日:カレログ運営開始
- サービス開始後からプライバシー侵害、マルウェア、男性差別、等の批判が巻き起こる
- 2011年9月1日:男性が女性のAndroid端末に仕込む想定の記事がある「GALAXY S2 裏活用バイブル」(リイド社)発売、 運営会社が編集にかかわった事を認めている
- 2011年9月4日:セキュリティベンダーが不審なプログラムして認定している事が公となる
- 2011年9月5日:プラチナ会員制度を廃止、本会員との差額返金
- 2011年9月7日:朝刊等でマスコミに大きく取り上げられる
- 2011年9月9日:セキュリティベンダーが新バージョンについてのスパイウェア認定を見送る
- 2011年9月13日:行政始動
カミングアウトすれば本ブログ運営者も
2011年8月30日のマイコミジャーナルに拠るカレログ登場のニュース
彼氏追跡アプリ「カレログ」が公開 - GPS、通話記録で行動把握が可能
を見てその余りの滑稽さに目を取られてしまい
以下のように冗談混じりにTwitterにつぶやいたのでした。
https://twitter.com/#!/tsukamotch/status/108523255714951168
それから直ぐに騒ぎは大きくなり、先ずは静観を保つことになった次第です。
これだけの騒ぎですのでまとめ記事もネット上には作られました。 少々言葉はきついですがNAVERに2011年9月12日に Androidアプリ「カレログ」の鬼畜っぷりまとめ がまとめられました。
カレログの今
カレログは 有限会社マニュスクリプト が作成しています。 同社では様々な指摘を受けたことで カレログ を改善し、今でも運営されています。 又 カレログ2 も新たに提供し始められました。 このことは2011年10月03日にDigital Todayが 完全無料になった「カレログ2」サービス開始へ として取り上げてもいます。 孰れにせよこのシリーズは牙を抜かれたと言えば不適切かも知れませんが 些か灰汁は抜けてそれほど話題になることもなくなったようです。
LanScope Anの登場
カレログ騒動から年も明けて早節分の時期、 日本経済新聞は2012年2月3日の記事 MOTEXが社員の行動を把握できるAndroid管理ソフト発表 に配信されたのがMOTEX(エムオーテックス)が発表した Androidスマートフォン管理ソフトの新製品 LanScope An でした。 企業での社員管理の統合環境に於けるクライアント側、 即ち個々の社員のスマホにインストールするアプリだと考えられます。
勿論採取、取得したデータから分析するノウハウが インテグレートされたシステムには含まれているのでしょうが、 スマホにインストールされるアプリを見れば アプリ稼働ログやGPSデータを用い、生産性や行動を把握する機能を有し、 カレログとの類似性を想起せざるを得ません。 彼女が経営陣であって彼氏が従業員と連想せしめられる嫌いは否めないでしょう。
この日経ニュースに対する反応が Ceron.jpに2012年2月4日に登録された Ceron.jp:MOTEXが社員の行動を把握できるAndroid管理ソフト発表 :日本経済新聞 の下部に表示されるTwitterやはてブなどの関連投稿に見ることが出来ます。 どうも社員側から見たネガティブな反応が多い様で、中には 社畜用カレログ などという刺激的な造語も用いられてるのが見えます。
此処には一面的な視点からのものとも多少考えられますので 企業経営側からの視点も見たく思いますが、 穿ってみればカレログに於ける消費者庁のように 更に厚労省や労働基準局の見解も知りたくもあり、 今後LanScope Anがどのような動きを見せるのか 大変興味のある処です。
普及するスマホと問われる情報リテラシー
ネット上を見ればこればかりではなく カレログに類似したスマホアプリは他にも散見されるようです。 例えばあんどろいどスマートの2011年11月10日の記事 「カレログ2」なんて目じゃない最新版凶悪セキュリティアプリ「Cerberus」の実力を見よ! には実にも恐ろしげな内容が記されています。 最新版Cerberus1.91で有効な主要機能をご参照いただければ なかなかに強力な機能が目白押しであることが明らかでしょう。 正に賢い人造人間がスパイを働いていると言った様相を呈してきます。
ことほど然様にスマートフォントという小型高性能コンピュータは 便利この上ない道具ではありますが 一度持ち主の意に反した使われ方をされれば凶器ともなり得ます。 行き過ぎと世が判断すれば初期カレログの際のように 行政が動き出すこともあるでしょう。 出来得れば行政に因る規制が掛かる方向へは動かないように願いたいものです。 また何よりも先ず己の身を守るにはスマホを利用する際に 必要最低限のリテラシーを持つことが肝心とならざるを得ないことも確かなのです。
追記
(2012年2月19日)
2012年2月14日のInternetWatchのニュースに
子供のスマホから位置情報などを取得するAndroidアプリ「Kids Log」β版
がありました。
Androidアプリの
Kids Log
β版の登場を伝える記事です。
このアプリの機能を挙げれば
- 位置情報の取得(一般会員:3カ月600円)
- バッテリー残量(特別会員・拡張機能:3カ月1800円)
- 子供がインストールしたアプリの一覧(特別会員・拡張機能:3カ月1800円)
- 電話の通話記録(特別会員・拡張機能:3カ月1800円)