Facebookの興隆とシンクロするディスプレイ広告、追うGoogle

話題になることも増えてきた米国発のSNSサービスの雄、 Facebookに於いては矢張りその収益構造が多くの人の気になる処のようです。

Facebookの収益構造

それに関して2010年1月31日と早い時期に 株式会社ループスの斉藤徹氏が国内SNSとの比較なども合わせ Facebook ビジネスモデルを徹底分析 ~ mixi,モバゲー,GREEと比較 にARPUという携帯キャリアに於いて通信事業者の1契約あたりの売上をあらわす数値を SNSに適用するなどして分析されており、 また収益構造の柱となる広告についてはその分類もされ参考になります。

更に端的にデータを見たい向きには MarkeZine2011年9月21日の記事 フェイスブック、米ディスプレイ広告市場でシェア1位に に米マーケティング調査会社eMarketer社のデータを配信してくれています。 それに依れば…

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Facebookの全世界での売上は2010年の20億ドルから2011年には42億7000万ドルへと 急伸長することが予測され、そのうち広告の売上は、 2010年の18.6億ドルから2011年には38億ドルに拡大するとされており、 多様化する売上に広告の占める割合は下がるにしても89%にもなることが言及されます。

Facebookとディスプレイ広告

記事後半は ディスプレイ広告 に割かれていて米国のディスプレイ広告売上の上位5社の市場シェアの 2009年から2012年に渡る4年間のグラフが示され2011年にはYahoo!を逆転する Facebookの2011年の米国内でのディスプレイ広告収入の見込みは20億ドル1000万ドルで、 これは米国のディスプレイ広告市場の16.3%に達し、 Facebook自身の全世界の広告売上げに於いても約53%と半分以上を占めることになります。

発展著しいFacebookの売上げの89%を占める広告、 更にはその半分以上を占めるディスプレイ広告、実に興味深い処です。

Fringe81 blogでは2011年5月6日に田中氏が facebookの広告戦略について想像してみた と題した記事の冒頭に5月4日にcomScoreから提示されたレポートの題名を刺激的と形容する Facebookは米国のディスプレイ広告の約3分の1を占めるリリース本体(英文)/ U.S. Online Display Advertising Market Delivers 1.1 Trillion Impressions in Q1 2011/ Facebook.com Now Accounts for Nearly 1 in 3 Online Display Ads in U.S. )がありその下に掲示される表と積み上げグラフにディスプレイ広告発展の面白いポイントが一つ見られるように思います。

Fringe81 blogでは飽く迄インプレッション数と断られていますが、 積み上げグラフに明らかなようにその伸びはほぼFacebookに拠るものだと言うことです。 そしてディスプレイ広告について記される中に アドネットワーク と言う語彙が見えるのにもディスプレイ広告というものを考える上で特徴的であるように感じられます。

ディスプレイ広告とは

さて、では此処迄頻出してきたディスプレイ広告とはいったい何なのでしょうか?

先ずはインターネットで何かを調べる際の定番Wikipediaを見れば インターネット広告 の項目に2012年1月現在章立てられる 今後の成長性 の中にディスプレイ広告を デジタルサイネージ と同義としリンク付けられますが、 どうにもそのようなものではないようです。

次にIT用語辞典に求めれば ディスプレイ広告【display advertisement】 が用意され引用すれば以下の如くとされています。

Web広告の形式の一種で、Webページの一部として埋め込まれて表示される、画像やFlash、動画などによる広告。画面上部などに表示される横長の画像広告を特にバナー広告という。
Web広告としてはもっとも初期から存在する広告フォーマットの一つだが、 広告効果はテキスト広告や検索連動型広告に劣るとされ、 多形式に比べ出稿量のシェアは低下しつつある。 近年では単純な静止画像の広告に加え、 Flashによるアニメーションや動画のストリーミング配信によるテレビCMのような広告もよく使われるようになっている。
WikipediaよりはFacebookが扱うものとしては妥当な気がします、 がこれでも何か未だすっきりしません。

ではMarkeZine記事中のグラフでYahoo!に迫らんとしている Googleはどのように捉えているでしょうか? Adsense(アドセンス)ヘルプページには正しく ディスプレイ広告 なる項目があり以下の如く説明されています。

画像や動画を利用して作成された広告です。イメージ広告、動画広告などの種類があります。
ページにディスプレイ広告を表示するには、広告スペースにイメージ広告を表示するよう設定する必要があります。
文内、 イメージ広告を表示するよう設定 にはリンクが設定されアドセンス利用者にはお馴染みのイメージ、動画とは、 ああ、あれのことかと納得される方もいるかも知れません。 すると意味としてはIT用語辞典の言う処とほぼ同じと考えていいでしょう。 従って矢張り少し腑に落ちない面を抱えます。

ディスプレイ広告とアドネットワーク

何処が引っ掛かるのでしょうか? 其れはFringe81 blogの記事を閲覧して感じた アドネットワークとの関わりが薄い説明である処にあります。

此処に日経ビジネスと多分Google社とのタイアップの特集記事であると思われる ディスプレイ広告のこれから がとても参考になります。 そして注目のキーワードとして用意される記事が正しく Google ディスプレイネットワークとは? です。 当該キーワードを説明する部分を下に引用します。

コンテンツサイトに向けたディスプレイ広告事業を、 Google は積極的に推進。その配信の要となっているのが、 世界最大規模を誇る広告配信ネットワーク「Google ディスプレイ ネットワーク(GDN )」である。
どうやら上に有ったディスプレイ広告の説明に於いて引っ掛かっていたのは此処でした。 即ち上の説明から連想するのは説明内に登場する バナー広告 であってページインプレッションと価格の連動するYahoo!全盛期の手法であったのでした。 それが新時代のこれから展開の考えられる ディスプレイ広告と相容れない部分でしたが、 しかし広告配信ネットワークとセットとなったバナー広告となれば 成程と膝を打ち、肯かせしめられるのです。

ディスプレイ広告と広告配信ネットワークの深い結びつきを覗わせる記事が 2011年4月6日にjapan.internet.comから Google本格参入 - 国内ディスプレイ型アドネットワーク市場はこうなる! として配信されています。 Googleを財務的にGoogle足らしめた検索連動広告について以下

  1. 広告手法の一般化
  2. ユーザーリーチの限界と単価の上昇
2点の問題点が挙げられディスプレイ広告に進出したGoogleと 国内のディスプレイ型アドネットワーク市場を取り巻くプレイヤー
  1. アドネットワーク
  2. アドエクスチェンジ
  3. SSP(Supply Side Platform)
  4. DSP(Demand Side Platform)
の4ネットワークの関係性について論じられています。 そして記事冒頭にはディスプレイ広告について非常に示唆深い以下引用部分が述べられます。
Google が次の市場として選んだディスプレイ広告市場は、現在のインターネット広告の中でも注目度が高く、海外・国内ともに他の広告と比べても非常に成長を遂げています。
その中でも特に「ディスプレイ形式のアドネットワーク市場」は、オーディエンスターゲティングや SSP(Supply Side Platform)、DSP(Demand Side Platform)などの最新アドテクノロジーを使った新興 ITベンチャーが有機的に繋がり、Web メディアの広告枠をネットワーク化することで独自の市場を形成しつつあります。
此処に至ってディスプレイ広告とは広告配信ネットワークと 切っても切れない関係にあると考えていいでしょう。 このことを示すようにGoogleの従来の主事業を支えるアドワーズに於いて ディスプレイ広告を開始する 際のチュートリアル( スタートガイド )を順を追って見て行けば GDN 即ちGoogle ディスプレイ ネットワークが頻出することに気付く筈です。 そしてディスプレイ広告事業に注力し始めたIT業界の覇者Googleの 動向に従来のディスプレイ広告ネットワークグループが注目している状態と現在を捉えることが出来ます。

アドネットワークについては 5分で分かるアドネットワーク というサイトなどもありそこには アドネットワークの動向 なるページも用意され 日本国内において、アドネットワークの需要が伸びてきている理由は? と項目立てられる中に以下が理由として列挙されています。

  1. 広告主がウェブ広告に求める役割が増えたこと
  2. アドネットワーク参加サイトが増えたこと
  3. アドネットワーク技術が発達したこと

Googleアドセンスと広告配信ネットワーク

Googleがの主力たるアドワーズの抱える問題点から新規事業として見込む ディスプレイ広告が確りとアドワーズに組み込まれていることが 新しい概念としてのディスプレイ広告の理解を妨げるようです。

ではアドワーズに組み込まれた新概念たるディスプレイ広告は 広告の肝とも言える、さて何処に於いて配信されるのか、です。 勿論それはGoogleディスプレイネットワークです。 日経ビジネスタイアップのキーワード記事には以下の如く配信先が記されます。

広告配信先となるコンテンツサイトはコンテンツ パートナーと呼ばれ、大規模から中小規模まで様々なWebサイトが名を連ねる。具体的には、「BIGLOBE」や「asahi.com」といったメディアサイトから、「COOKPAD」のような専門サイト、一定のファンを持つブログなどの小規模サイトなど、日本だけでもその数は数えきれない。
ここに 一定のファンを持つブログなどの小規模サイト とあるのはアドセンスを利用するサイトと見て間違いないでしょう。

ディスプレイ広告の配信先はコンテンツサイト

Googleが広告出稿者から依頼を受けて広告配信をする先として アドセンスが重要な役割を負っているとはどういうことでしょうか? そしてキーワード記事にはその他に配信先としてメディアサイト、専門サイトが上げられます。

日経ビジネスタイアップ特集にはもう一つ参考にしたい記事が用意されています。 それはGoogle社のメディアセールス統括部長近藤弘忠氏のインタビュー記事 進化するディスプレイ広告 です。 此処で氏はアドワーズの次のステップとしてディスプレイ広告に注力することの根拠として インターネットユーザーの検索サービスの利用時間は月間で20分以下にすぎず、 最も多くの時間を費やしているのはコンテンツの閲覧 と言う総務省の2009年の調査結果を挙げています。

YouTubeがディスプレイ広告配信先として中核的な位置付けを与えられている、 との言及も見逃せません。 上に上げたメディアサイトや専門サイトとの契約、 そしてアドセンス、それらネットワークに重要な重みを与えられて 自社コンテンツであるYouTubeが存在していることになります。 これを見ればキーワード記事に示されるように 日本のインターネットユーザーの74.8%、約4000万人へ、また全世界での80%もの人への リーチ力をGDN が持つとされるcomScoreの2011年2月のデータも頷けます。

以上からディスプレイ広告の配信先ネットワークはコンテンツサイトであるという特徴を持っており 其処が従来Googleを支えてきた検索連動広告、 此処でアドワーズと言うと誤解を招くのが分かり辛い処になりますが、 との明確な相違点と言えるでしょう。

ディスプレイ広告の発展とFacebook、そしてGoogle

ディスプレイ広告の伸長には恐らく昔懐かしい響きのポータル戦争の論理が働いていると考えられます。 ポータルサイトとは人々がインターネットに接する時に最初に接するサイトのことです。 最初はYahoo!が覇権を握り、次にペイジランクを擁したGoogleが牛耳りました。 そして今ソーシャルグラフを武器にFacebookが躍進し、Googleが警戒する、と言う構図です。 多くの人々がインターネットに接続すると、 そして今やそれはスマートフォンからが増えてもいるのですが、 友達の近況が記されたSNSを開き、 そして其の中から口コミによるリンクを見つつ そのまま完結してインターネットを閉じてしまうことも増えてきました。 此処に於いてFacebookとディスプレイ広告の著しい伸びは同期しているのでしょう。

この様にFacebookの興隆と共にその効果が顕在化したディスプレイ広告と言う コンテンツサイトを主とした広告配信先ネットワークを含む新概念は 今や大きく世の中に影響を与えるかの状況を呈して来ました。 検索連動広告で成長率の鈍化と向き合わざるを得なかったGoogleも 今や自前で Google+(グーグルプラス) と言うSNSを提供し、ディスプレイ広告に注力し始めました。 しかし準備は既に検索連動広告の充実と共にアドセンスを見える形として YouTubeをコンテンツサイトとして整っていました。

TechCrunchの2012年1月20日の記事 ラリー・ペイジ:「Googleのディスプレイ広告は50億ドル事業」 にはGoogle社の最高経営責任者ラリー・ペイジ氏が19日の収支報告で ディスプレイ広告の自社への貢献を、 今の処飽く迄一年換算としてですが、 50億ドル、収益の12%を占める迄に成長していると述べていることが伝えられています。

以上よりこれからインターネット広告に於いてはIT業界の覇権を掛けて、 鎬を削りあう激しい競争があり影響は中小迄含めて大きくなることが予想されます。 これは若しや貴方がインターネット上にビジネスに幾らかでも依存すれば 傍観を許されない事態であることも確かなのです。