XQDとメモリーカードの規格の変遷

その昔ヒットしたソニー社のウォークマンはカセットテープを再生するという制限から カセットテープ以上に小さくすることは出来ませんでした。 しかしアップル社の大ヒット商品iPodはCDの入る余地などないほど小さく 最新のものは腕時計代わりになるまでコンパクトに出来ています。 これほど音楽再生機器の小さくなったのは一重にその記録情報媒体にあるでしょう。 iPodでは最初こそ記録媒体にパソコンと同じくHDDを使用していましたが 直ぐにメモリーチップに置き換えられました。 音楽は小指の爪ほどのICチップの中へ詰め込まれることとなったのです。

メモリーカードとは?

このメモリーチップを利用した技術は様々な処で活躍してきました。 iPodが一般的になる以前はメモリーチップを利用したガジェットに音楽を詰め込んでおく手法も良く見られたものです。 USBメモリースティックもメモリーチップを利用しており それでファイルを受け渡すことも今や余りに一般的になり過ぎて、 ウィルスに注意する必要まで出て来たことは言う迄もありません。

メモリーチップをコンパクトに詰め込んで広く使われているのがメモリーカードでしょう。 例えばお手元の携帯電話にはカードスロットが付いていないでしょうか。 ここに差し込んだメモリーカードに電話帳などの記録を保存出来るのですね。 携帯電話が壊れてもメモリーカードが外部に相当するので連絡先や予定の情報は大丈夫と言う寸法です。 更にはカメラの外部記録装置としてもメモリーカードが活躍していることは デジカメファンの方なら知らない筈がない処でしょう。 音楽再生装置ではカセットテープに相当したメモリーカードはカメラではフィルムに相当する訳です。

新規格XQDメモリーカードと実商品

斯くも活躍の著しいメモリーカードですがその新規格が…

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サンディスク社、ソニー社、ニコン社の三社により提案され CFA(CompactFlash Association) により2011年12月7日に採用が発表されました。 速度に於いては理論値は2.5Gbpsで、将来的には5Gbpsに対応予定し、 容量に於いては技術的には理論上2TBを超える大容量化が可能な技術であることのことです。

そして明くる2012年1月6日にソニー社が満を持して公開したプレスリリース 業界最高の書き込み速度1Gbps(125MB/秒)を実現したXQDメモリーカードを商品化 にその実際の商品化の情報が配信されました。 その性能を書き込み速度1Gbps(125MB/秒)と言われてもピンと来ませんが デジタル一眼レフカメラでのRAW撮影時に於いて約100コマの連続撮影が可能 になると聞けばその凄さが分かろうと言うものです。 しかもこれは飽く迄一般向けの製品であると言うのが前提条件です。 シャッターチャンスを逃し続けたハイエンドデジタル一眼カメラユーザーは食指を動かされるのではないでしょうか。 発売は2012年2月15日、価格はオープン価格とされていますが、 16GBの QD-H16 が店頭想定価格2万円前後、32GBの QD-H32 を3万3000円前後と予想する情報もネット上に出ています。

このXQDメモリーカードの実製品発表を受け、 ニコンでも2012年1月6日プレスリリース デジタル一眼レフカメラ「ニコン D4」を発売 にてCFスロットに加えてXQDスロットを備えた新たなフラッグシップ Nikon D4 を発表しました。 発売はソニーXQDメモリーカード発売の翌日2月16日が予定されています。

メモリーカードの変遷

さて、このメモリーカードですが、 恐らく読者の大半に馴染みがある処では上にも書いた携帯電話に利用する SDカード ではないでしょうか。 このSDカードもメモリーカードの一規格です。 そしてこれが事実上の標準として近年長く世間に普及したのでした。

ちょうどAll About編集部の手になる既に5年前のものとなった2007年9月19日の記事 高速転送!USB接続も可能なSDHCカード がそうと意識せずともメモリーカードの状況を今となっては伝えてくれる内容となっています。 冒頭部分を引用すれば

「コンパクトフラッシュ(CF)かスマートメディアか」などと言っていたのも今や昔。ソニーが推す「メモリースティック」や、富士フイルムとオリンパスが開発した「xDピクチャーカード」とのし烈な規格争いも収束に向かいつつある現在、松下電器が開発したSDメモリーカードおよびSDHCカードがデファクト・スタンダードなメモリーカード規格として認識されている。
とあり正しくSDカードが数あるメモリーカードの規格の中で勝ち抜いたばかりの状況が 当時の温度で以て伝わって来るようです。

引用部にもある様に矢張りメモリーカードに於いては提供各社の思惑交じりで 様々な規格が乱立し其の中で先ずはサンディスクの開発になるコンパクトフラッシュが抜き出で、 更には松下電器がSDメモリーカードがそれを追い抜いたというのが大凡の メモリーカード規格国取り物語の経緯であったのでした。 其の為SDメモリカードをコンパクトフラッシュの端子に接続可能にする 変換アダプタなども屡目にすることとなったのです。

ユーザー重視の規格こそ望まれる

今回のXQDメモリーカード規格はコア三社にサンディスクが名を連ねているのを見ても 互換性こそないもののコンパクトフラッシュの系列を継ぐものと見られるでしょう。 実商品の出掛けの今でこそハイエンドデジタル一眼レフカメラにターゲットが絞られていますが、 孰れ携帯電話の外部記憶メモリーなどにも実用化が図られるのではないでしょうか。 実際書き込み速度が速ければそれだけ保存に掛かる時間が短縮出来るということ、 携帯付属のカメラの解像度が上がり、写真一枚の容量も増加する一方の現在、 書き込み速度の速いメモリーカードは必須のものとなる筈です。 その市場を大きく占有するSDメモリーカード陣営に取ってはそれは望ましいことではないでしょう。

自社に有利な規格が市場を支配するのは企業経営に取っても有利に働きます。 従って企業側の論理として自社が与する規格を応援するのは致し方のない処でしょう。 しかし何時でも規格争いはユーザーに取っては好ましいものではありませんでした。 今回のXQDメモリーカードの規格と実製品の登場はかなりのインパクトを市場に与えるのではないかと思われます。 SDカードの上位規格SDHC、その後付の最上位規格 Class10に於いてもその書き込み速度は10MB/sec(80Mbps)と少々XQDには見劣りする感が有ります。 出来得れば状況がどの様に転がろうとも利用者に便宜が図られる配慮が欲しいものです。