そんな個人的見解とは裏腹にERPビジネスがSIベンダの主業務として成り立って来たのは、 勿論、効果も当然のこと乍あったのでしょうが、 世のIT化が未だ黎明期にあったことにも起因すると思います。 また早い段階でIT化を推し進めたITに大した意識が高く尚且つ企業体力に優れた大企業も、 ドッグイヤーの斯界では当時の導入システムは最早使える代物ではなく 世代交代の端境期に乗じた面も考えられます。
コンセプト自体にはEA即ちEnterprise Architectureなる概念、 組織の高効率を実現すべき標準化的メソッドと同様、 大いに首肯せしめられますが、 悪く云えばベストプラクティスを有する企業の業務フローの パッケージソフトを通してのお仕着せとも取れるべく感じ居れば、 SAPの乗じて業績を伸ばした分だけ、企業側に標準化的問題があったことも、 身の回りを見渡せば、データ一つの行方が分からず大騒ぎをしているのを見るにつけ、 顧客の悩みを解消する提案は見事なビジネスモデルであったとも思えます。
japan.internet.comの2008年7月23日の記事の SAP ジャパン、中堅企業向け新 ERP 導入プログラムを提供開始 なるを拝見すれば、ERP提供企業の雄、SAPの日本法人が、 年商500億円未満の中堅企業を主な対象としている同社が今回の新規パッケージでは 其れ以下ということですから多分年商100億円程度の企業が見込まれているでしょう、 ターゲット企業を従来から大きく広げビジネスを展開するように方針転換したかに見えます。 短期間、低コストでの導入が可能と云う事ですが、 然に有らねば今回のターゲットには導入は難しく、 従来のビジネス展開と異なって見えれば、 飽くまで穿って見ればの話ですが、矢張り舵が切られたのでしょう。
大企業に比較すれば旨みの薄い中堅企業迄ターゲットユーザーとして守備範囲を広げたのは 既に見込める従来ターゲットには軒並み売り切ってしまった為、 需要の一巡での新規顧客開拓と云う、定番フレーズの適用が適当とも思えます。
確かに、良く云えば 大企業での余裕を持った予算活動の中で 既にバージョンを重ねれば導入フローにも改善の施され、 適合業務フローの増え、カスタマイズの必要も漸次減少すれば、 導入コストも下がり、中企業相手のビジネスでも利益を上げられるようになったのかも知れません。 上記従来より低コストでの提供が可能になった背景を有せば、 比較的、薄利多売とも思える状況を呈する展開をする必要が生じたとしても、 提供側企業の安定性には大きく寄与すると云うことなのでしょう。
提供側の状況が整いつつあるとすれば、 IT化は個人事業主と云えど最早避けては通れぬ道なれば、 孰れ小、零細企業にも其の狙いを定められる時期が遠からずやってくるのかもしれず、 商店街の店主が仕入れ先から税務申告、顧客管理迄を一本のパッケージを通し、 普通に実現する世にならぬとも限りません。
扠、折りしもITmediaの翌日の2008年7月24日の藤村能光による記事 “サムライUI”で経営を効率化 シャープが掲げる次なるIT戦略 にはシャープのITシステム推進センター副所長である端坊辰彦氏により 「いままでに導入してきたERPのことは忘れた」 と述べられていると同時に、全世界の基幹システムを総てSAP製に統合刷新する戦略が記されます。
少しく矛盾を感じられる記事内容で、シャープが如何したいのか判然しませんが、 有り体に云えばERPパッケージでは敵わないので、 上に乗っけるスキンで勝負すると云う戦略を高々とぶち上げていることになるでしょうか。 で、あるとすれば、シャープの事業ドメインとしては少し違和感を感じざるを得ませんが、 例えば当ブログ2008年7月19日のアーティクル オムニチュアサミットとWEBマーケティング でのオムニチュアの新製品「SiteCatalyst 14」に於いて
従来より定評のあった其のダッシュボードなるユーザーインターフェース部分に Ajaxをふんだんに取り入れたRIA即ちリッチアプリケーションインターフェースを用い、利用者へ優しいツールへと進化を遂げているなる引用部の ダッシュボード と基本的コンセプトは異ならず、 シャープと云う所謂ハードウェアを主に扱うイメージのある企業体でさえ、 当該方向に向け進まざるを得ない時代状況、 即ちソフトウェアの時代を思わずには居られぬ処、 維新 が大好きな政治家同様、 侍 が大好きな商人も世には多けれども、如何かと思いますので サムライUI については避けられたが好かろうと存知ます。