恐らくは世の中で最も遅いセキュアサーバー化ではないでしょうか。 Google社が提供するブログサービス Blogger (ブロガー)の独自ドメイン(カスタムドメイン)に於いてです。
Sの意味
セキュアサーバー化とはホームページデータを保存しているサーバーをSSL化することで 表示のリクエストを送ったユーザーのブラウザとの間で其の通信が暗号化されるようにすることを言います。 セキュアサーバー化されたホームページにアクセスすると アドレスバーのドメインの前のお馴染みの HTTP の表示がHTTPSと変化します。 此の S はセキュアのSを表しています。 こうすることで通信の途中経路で通信内容を傍受されても内容が漏れ難くなりますから 早くからパスワード入力やメールフォーム、ネットショップのカートでは必須のものとされ、 現在では其れがWebサイト全体に敷衍されるに至ったのでした。
古くはコンピュータの処理能力も低く 通信毎に暗号化と複合化をホスト、ブラウザ共に繰り返すのは好まれない面もありましたが、 現在ではコンピュータの能力は数桁単位で向上しています。 また暗号化と言うからには信頼できるものが必要で 其のための第三者機関からのSSL証明書発行には多額の経済的負担もあり Webマスター連から厭われる理由でもありましたが現在では其の負担も低減しています。 従って現在ではセキュアサーバー化は推奨されこそすれ決して拒まれる理由はない訳です。
HTTPS化の状況
およそ検索エンジン最大手たるGoogle社が推し進めており 検索結果の順位上もHTTPS化は優遇されるとの情報もあって 多くのWebマスターは挙って自ら運営するWebサイトのセキュアサーバー化を推し進めました。 しかし当のGoogle社が提供するBloggerサービスでは今の今迄 遂にHTTPS化は提供されるには至りませんでした。
勿論、Google社は言うに及ばず大手IT企業の運営するWebサイトは 早くからHTTPS化は導入されていました。 実はBloggerサービスでもHTTPS化は早い段階でなされていましたが 其れは独自ドメインではなくGoogle社がBlogger用に用意した専用ドメイン blogspot に於いてでした。 但し此のドメインに於いては2012年に突然 blogspot.com で運用されていたものが日本からの利用者には blogspot.jp が振り変えられるなど余り芳しからぬ評判だったような事情もあります。 其れでなくとも人情的にも、また己に取って重要な 資産としての独自ドメイン ともなる時代であれば経済的にも、 己の信条の現れでもあり得るブログは独自ドメインで運営したいものです。 更には Bloggerサービスの他無料サービスに対するアドバンテージの一つとして 無料で独自ドメインで利用出来る機能があったのであれば尚更でしょう。
Bloggerブログでオリジナルの独自ドメインを利用する(2011年7月5日)
Bloggerサービスでは今の今迄 此の独自ドメインに於いて 遂にHTTPS化は提供されるには至らなかったのでした。 其れが今回漸く実現の運びとなったのです。
ブログシステムのHTTPS化
ブログシステムでは新規投稿などがなされる度、 リンク先が動的に入れ替わり表示されますから リンク先ともなるアドレスがそっくり入れ替わるHTTPS化は難しい面があるのも事実です。 出来れば従来受けた被リンクも其の儘継承したい為に HTTPアドレスに張られたリンクをHTTPSアドレスにリダイレクトしたい要請もあり 其れを多くのユーザーを抱えるサービスで漏れなく支障なく提供するよう 機構を整えるのは時間も掛かるでしょう。 実際、本ブログシステムが利用する エックスサーバー 社の提供するWordPress専用サービスでも ユーザーからの気持ちとしては提供は遅々として進まないように思えましたが、 其れでも一昨年、 2016年の夏には独自SSL設定機能が追加され無料でWordPressの常時SSL化が可能に なっていました。 世界一のプログラマー集団とされるGoogle社謹製のサービスが 其れに一年も遅れを取る理由など考えられないように思われたものです。
斯うして長期間待たされたユーザーとしては半ば諦観を以てBloggerサービスと付き合い、 更にはいつでもサービスの停止を受け入れ 他サービスに移行出来るだけの心の準備だけは怠らないようにしておく他ありませんでした。 なんとなればGoogle社はなんの躊躇いもなく 提供自社サービスを停止することを幾遍となく繰り返しているからです。
覚束ないGoogle提供サービス
世の中のEメールサービスを置き換えるとの鳴り物入りで登場した Google Wave もそうでした。 多くのユーザーの悲鳴と移行先を探す喧騒と共に終了した代表的フィードサービスであった Google Reader もそうでした。 そして今また2018年3月30日、URL短縮サービスの goo.gl も終了が発表されました。
Googleの短縮URLサービス「goo.gl」がまさかの終了を発表。作成済みURLは今後どうなる?(INTERNET Watch:2018年4月2日)
BloggerサービスもGoogle社提供のサービスとして 決して蚊帳の外に在る訳ではなかったのです。
従って停止の予感を抱かせるBloggerは Google社のインフラを利用している為に 突然のアクセス急増に対する驚異的なスケーラビリティ から機会損失を極端に減らせる飛び抜けた優秀さを持っているにも関わらず 決して他人にお薦めできるサービスではありませんでした。 此の優秀さ故にCDNなどネット裏技的なハックを用いてBloggerサービスで HTTPS化を図る猛者もしばしば見掛けたものです。 其処に今回の突然の降って湧いたようなHTTPS化は Bloggerサービスの直近の終了はないだろう暫くの延命が確実ともなり、 ユーザーに取って朗報であったのは言う迄もないでしょう。
其の時は突然に
Bloggerの独自ドメインでの利用可能の情報は特に公式ブログなどで公表された様子もなく、 個人的には其の訪れは突然でした。 Bloggerの管理画面の閲覧は日常でしたので2018年3月の終わりも近い27日、 いつものように覗く当該画面の情報に アラートのような枠に括られた表示がされていました。
長い間待ち望みながら半ば諦めもしていたので目を疑いましたが Bloggerのセキュアサーバー化のお知らせに違いありません。 急ぎ管理画面の基本設定を見てみれば HTTPS 項目が追加されているではないですか。
- HTTPS の使用
- [HTTPS の使用] をオンにすると、訪問者は https://tech.acenumber.com にアクセスすれば暗号化された接続でブログを閲覧できるようになります。
- HTTPS リダイレクト
- HTTPS リダイレクトがオンになっている場合: ブログの訪問者は常に https://tech.acenumber.com にアクセスすることになります。
- HTTPS リダイレクトがオフになっている場合: http://tech.acenumber.com の訪問者は接続が暗号化されていない HTTP 経由でページにアクセスすることになります。 https://tech.acenumber.com の訪問者は接続が暗号化された HTTPS 経由でページにアクセスすることになります。
因みに tech.acenumber.com の部分にBloggerサービスで利用している独自ドメインが表示される旨、示しています。 迷うことなく HTTPS の使用 の項目でプルダウンメニューとなっている「いいえ」を「はい」に選択し替えた途端 画面は自動遷移しました。
- HTTPS の使用:はい [HTTPS の使用] を有効にする手続きを行っています。しばらくしてからもう一度ご確認ください。
- HTTPS リダイレクト 現在、[HTTPS の使用] を有効にする手続きを行っているため、この設定はご利用いただけません。しばらくしてからもう一度お試しください。
HTTPS化完了
自らの独自ドメインブログのHTTPS化へのGoogleの施す自動処理を管理画面の前で待ちます。 勿論、直ぐにもリダイレクトを有効に切り替えたい為です。 リダイレクトを有効にしておけば HTTPプロトコルでサイト閲覧を希望したリクエストにも 自らのブログは応えるようになります。 十数分ほどでしょうか、画面を更新すると HTTPS リダイレクト 項目に選択可能なプルダウンメニューが表示されるようになりましたので 即刻切り替えれば設定は自動保存されました。 そしてHTTPS化利用可能を気付かせてくれた管理画面の告知の表示は 以下のように表示が切り替わりました。
そして本ブログ執筆者が別に運営するBloggerを利用するブログでは、 今、立派にHTTPS化されたサーバー上でブログが稼働しています。