携帯基地局測位とその精度~社会からの要請と誤解

とても進化した携帯電話では、 特に去年から爆発的に普及したスマートフォンは 最早高性能な小型コンピュータとでも言えますから 朧気にスマートフォンの今置かれている場所、 即ち持ち主の居場所の特定など簡単なことに思えます。 しかし本当にそうなのでしょうか?

一部のスマホしか位置特定できず 110番通報、対応要請

上にリンクを貼った日本海新聞の2012年1月10日の記事には以下、引用する如くあります。

GPSは半径数メートルまで通報場所を特定できるが、 スマートフォンは半径数百メートルまでしか特定できないことが判明。

どうやらスマートフォンは一部の機種を除き、 それほど正確には位置情報を把握出来ない場合があるようです。 これはどういうことでしょうか?

GPSの精度

高まる日本版GPSへの期待~予算要求額を大幅に上回る106億円

本ブログ2012年1月14日の上の記事ではGPS(Global Positioning System:全地球測位システム)の精度を 米国がSA(Selective Availability)を外すまでが100m程、 外された後は10m程とオーダーが一桁上がり、また…

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更にその精度を数cmから1m程迄に上げる為に 日本版GPS衛星が計画されている旨を述べました。

この精度が日本海新聞に警察庁の言うGPSの精度です。 そしてスマートフォンはこれを一部の機種でしか実現出来ないとしていますが、 GPSを搭載したスマートフォンが通知可能な機種と言うことになるでしょう。

基地局測位とは?

では半径数百メートルまでしか特定出来ないスマートフォンとはどんなものになるでしょうか? このスマートフォンに搭載されている機能が 基地局測位 機能であろうと思われます。

基地局とは携帯キャリアが携帯電話間の通話を取り持つ通信網の末端で 直接携帯電話と無線通信をする装置とそれを備える建造物のことを指します。 直接各ユーザーの携帯電話と遣り取りをする訳ですから 最もユーザーの位置情報を把握し易いと考えられます。

其処で基地局を用いて即位、即ち位置情報を獲得しようとする考えが生まれます。 しかし残念ながらどうやら位置情報として利用出来るのは基地局そのものの位置情報だけのようです。 つまりその基地局と通信しているユーザーの位置は その基地局との通信可能な範囲に存在するとして通信距離を誤差とした 位置情報の中心として基地局の位置情報をユーザーの位置情報として採用しているものと考えられます。

複数基地局測位方式(AFLT)

基地局測位は実際には上に記したように単一の基地局から位置を測るものではなく 複数基地局測位方式、 AFLT(Advanced Forward Link Trilateration) なる方式が用いられているようです。 これは時計を用いて複数の基地局との遣り取りから距離を測り位置を測ろうと言うものです。 想像するに簡単なのは通信可能な複数の基地局から同心円を描いて重なる部分を ユーザー位置と見做すというものでしょう。 そうであれば重なり合った面積が即ち誤差となる訳で 矢張り100m単位の誤差は免れないようです。

携帯キャリアの基地局測位の実際

さて此処に実際の携帯キャリアの測位サービスが公開されています。 auではEZwebで提供する位置情報サービスについて 位置情報 で情報が公開され其処には簡易位置情報として基地局測位に言及がなされ その誤差に関しては目安として以下箇条書きする如くの様にされています。

  1. 都市部で利用した場合、500メートル~600メートル程度の誤差
  2. ビルの谷間、地下などの場合、最大数キロメートル程度の誤差
  3. 田園部、湾岸、高層ビルなどで利用した場合、最大十数キロメートル程度の誤差

ソフトバンクでは 3G料金・割引 ケータイ基本パック:注意事項 に於いて基地局測位の場合、数百メートルから数キロメートルの測位誤差が発生するのに対し、 GPS測位の場合、測位誤差は数メートルから数十メートルとなる旨、述べられます。

そしてNTTドコモは 測位方法 にGPS測位と基地局測位が記され、基地局測位に於いては 誤差が300m以上になる場合がある、と明記されています。

日本海新聞に警察庁が2011年2月に各社への対応を要請したとあるのに対し、 KDDI(au)は同年秋発売の一部機種から対応を開始したが、 NTTドコモ、ソフトバンクモバイル、イー・アクセス(イー・モバイル)は未対応とあります。 上記の如くNTTドコモは携帯電話に於いては基地局測位サービスを提供しており、 また要請より一月後の2011年3月29日のプレスリリース spモードの機能を拡充 -基地局データを活用した位置情報提供を開始- を見れば同月31日よりスマートフォンに於いて基地局データを活用した位置情報を提供開始と 公式に配信しているのを鑑みれば対応出来ている筈だと考えられます。

測位精度を決める基地局に関する要因

Google社では2009年2月4日から Google Latitude なるスマートフォン利用者同士でお互いの位置情報を Googleマップ上で共有できるサービスを提供しています。 このサービスに於ける 現在地情報のソースと精度 というヘルプページでは以下の三種類の方法に拠る測位精度について言及されています。

  1. GPS:数メートル
  2. WiFi(ワイヤレス ネットワーク):約200m以内
  3. Cell ID(携帯電話の基地局):おおむね数千メートル以内

以上、本記事に述べたのに準じる、裏付けてくれている内容となっているかと思います。

基地局測位に関して言えばその詳細を記した情報は見付かりませんでしたが AFLTの項に記したことから常識的に考えて基地局を多く有す 即ち基地局密度の高い携帯キャリア程、測位精度に有利であることが容易に推測出来ます。

基地局数のデータに関しては総務省総合通信基盤局の 無線局情報検索 で得られるのですが出しっ放しの感も有り特に使い易く整理されてはいません。 その使い勝手の悪いデータを閲覧性も好く纏めてくれているサイトがあります。 それが 携帯・PHS関連@Wiki で2012年1月時点の最新のデータは 携帯電話基地局免許数(平成23年12月10日現在) から得られます。

基地局数については 携帯・PHS関連@Wikiサイトに以下引用の如く、 取り扱われ方や誤解迄含めた非常に示唆深い指摘が言及されています。

携帯電話基地局には、大出力のものから小出力のものまで様々です。 数や周波数帯だけで優劣を語ったりしないようにしましょう。

このことを前提として考えれば基地局測位精度については単に基地局数だけでは図れないことは明らかです。 敢えて記せば以下とでもなるでしょうか。

基地局数 × 基地局出力 × 周波数帯効果

例えば常日頃ソフトバンクの主張する800MHzと2GHz帯の電波到達度に関する差異の件もあるでしょう。 以前ウィルコムの基地局では1局の同時通話数が WCDMA基地局の高価なものに比較して桁違いに少ない状況もありました。 ここら辺りは巷間良く言われる繋がり易さ、と相関関係にあるのかも知れません。

蛇足ですがデータを見た個人的な印象として UQ Communications社の2.5GHz帯モバイルWiMAXの基地局は18647局、 全国で前期より174局増え、東海では24局増えており利用者としては頼もしい限りです。 それに対してSoftBankでは2GHz帯も1.5GHz帯もW-CDMA基地局の増えてるようには見えません。 かなり基地局充実に怪気炎を上げている印象があるのですがどうなのでしょうか? またLTEはWiMAXや無線LAN802.11gと類似の特性であることから CDMA系に比して電波到達度に於いて不利であり、干渉に対して非常にシビアですから セルを細かく分割していかねばならず、数が要求される処でしょう。 これについてNTTドコモもauもLTE局増設の努力の後が見られるのですが softbankには少々見当たらないようです。 アップル社のiPhoneの時期モデル5に於いてはLTEが携帯キャリアに要求されると噂される中、 果たして販売に支障がないのか、気になる処ですね。 電波カバー率の効率化計算で勿論、中継局や 包括免許の小電力レピータを用いるべき部分も必要でしょうが、 その数の多さよりは基本的には基地局の充実が必須条件とはなる気がします。

基地局測位に対する誤解

基地局測位に関してはネット上にも積極的な情報開示は少ないように見受けられます。 警察庁から要請を受けることを踏まえると携帯キャリアとしては積極的に出したい情報ではないのかも知れません。 GPSに比して精度が落ちざるを得ない機能についての情報も必要とされてはいないのかも知れません。 このようにそれ程基地局即についての情報がそれ程出回っていないことから誤解が生じてもいる印象があります。 例えばRESPONSEと言う自動車のものを主とする情報サイトでは2011年3月29日に 上記のNTTドコモのプレスリリースを以て NTTドコモ、スマートフォンに位置情報を提供 基地局測位 なる記事を配信していますが、 以下引用の様に書き記すなど、少々誤解が発生する場面もあるようです。

GPSより精密・高速に位置測位

GPSと通信不能な屋内や地下での基地局測位の優位性が精度理解に誤解を与えているのかも知れません。

上記の本ブログ1月14日の記事にも少し記してありますが 携帯電話やスマートフォンでは基地局はGPSの位置測位を補助する際に利用されることもあり、 携帯キャリアの基地局測位の実際、の項のリンク先にも 幾つかの位置測位方法を並列保管しながら利用されることが通常のように記されてあります。 このことからも精度の低い基地局測位に関しては単独で扱われることが少ないのかも知れません。

しかし測位精度を決める基地局に関する要因、の項の蛇足部分で述べたように これからLTEが普及していけば (LTEに関しては本ブログ2011年12月1日の記事 ドコモのiPhone、iPad販売の鍵と言われるLTEとは? をご参照下さい。) 基地局の増加は免れず、それが何某か基地局測位に新局面を齎らすことになれば面白いと思います。

基地局測位と類似して考えられる測位方法に 上のGoogle Latitudeについての部分にも僅かに触れました Wifi(無線LAN)位置測位がありますが 長くなりますので稿を改めたいと思います。