ファーストサーバ社前代未聞のサーバー大規模障害の一週間

レンタルサーバサービスに於いて 前代未聞とも言う事態が発生してしまいました。 今IT関連として漸く一般的になりつつある言葉の クラウド もその信用を失墜させかねない事態です。

発端、6月20日

それはよくあるサーバー障害かと思われました。 障害発生当初2012年6月20日夕方の時点の様子がtogetterに ファーストサーバー障害によるユーザーの声・・・ としてまとめられています。 この時点ではしばしば見られるような長くても半日あれば 全てが復旧されるような障害かと思われていた感があります。

しかしその予想は完全に裏切られました。 全く前例のないような事態であったため この時点では誰も予想が付かなかったのです。

ファーストサーバ社

今回大規模障害を起こしてしまったのはサーバーサービスを主業務とし ビジネス仕様と言うことでその安定性に評価を取っていた筈の ファーストサーバ株式会社 でした。 障害発生から翌々日、 段々とその重篤な事態が判明しつつあった2012年6月22日午前の時点で 同社のホームページトップには以下引用するお知らせが掲載されていました。

スポンサーリンク
■ 弊社一部サービスの障害について
現在、弊社一部のサービスにおいてWEB・メールなどがご利用いただけない状態です。
ご利用のみなさまにはご不便をおかけいたしまして誠に申し訳ございません。
復旧状況、ご利用再開の手順など、最新情報は随時以下ページにてご案内いたしております。
【重要】弊社一部サーバーの障害に関するお知らせ

引用太字部分に貼られていたリンクを辿れば 原因と対策について に時系列に経過が記されていました。 その障害のファーストサーバ社に於ける検知は 2012年6月20日の夕方17:50だったことが明らかにされました。 サイトにも復旧作業に懸命に取り組んではいるものの 復旧の可否、復旧度合についての言及の出来る状況には無く、 自ら長期間を要すると言及するなどその深刻さが覗わる内容でした。

ファーストサーバ社の 企業情報 を見れば ヤフー株式会社 が主要株主となっています。 またその親会社 ソフトバンク株式会社 であるのはよく知られている処です。

深刻さが覗えた22日時点のお詫びページ

更に深刻さが覗えるのはそのページには サーバーをお使いいただく手順について へのリンクが用意されており、通常は有り得ない 利用客に大変な手間を要求する呼び掛けが掲載されていました。 それからも非常事態であるのが知られました。

そんな情報でも全てを失うよりは幾らかマシと言えるでしょう、 先ずは出来る限りのデータ復旧を図ろうとする顧客側の ファーストサーバ関連情報を求める声がネット上には この22日時点で凄まじい勢いで飛び交っていたのを感じます。 藁をも縋る思いで情報を求めるのは当然とも言えます。 サーバーは今やビジネスに於いてもインフラ、ライフラインとなっているからです。

ファーストサーバ利用顧客

この時点でのその利用顧客に目を転じて見た時、 先ず思い浮かぶのは以前よりファーストサーバ社が実績と信頼性を強調するのに 喧伝していた全体の8割を占める企業、官公庁ユーザーの内にも 官公庁のWebサイトなどが市民生活への影響もあり懸念されました。

また同社ではネットショップのシステムとしてシェアも高い EC-CUBE を積極的にサービスに取り入れ EC-CUBE - レンタルサーバーの【ファーストサーバ】 なるページも用意されますから、 従ってこれを利用する多くのネットショップは 下手をすれば死活問題の処も出て来る可能性も出て来てしまいました。

また大手ユーザーとしては サイボウズ株式会社 があしました。 ファーストサーバサイトにはサイボウズとの連携が図られた サイボウズ Office 9 - 【ファーストサーバ】 も用意されています。 サイボウズと言えばグループウェアの大手ですから、 その被害状況及び影響度合いはその時点では全く判明しませんでしたが 間接的にサイボウズグループウェアユーザーにも関わりますので 少なくない影響が予想されました。

そしてファーストサーバ社の主要株主のヤフーも多くのWebサービスを提供していますから その内の幾つかをファーストサーバ社のサーバーを使っていないとも限りません。 またソフトバンク社も同様に言えた訳です。

広がる被害と怪しい求人情報

障害の発生当初には誰もが思っていなかった 大規模なものとして徐々に明らかになって来ました。 6月23日にはCOMPUTERWORLDから ファーストサーバの大規模障害、データ復旧は不可能 と遂にデータ復旧の不可能性についての記事が配信されもしました。 ファーストサーバ社にバックアップは失われ、 顧客自らの手での再構築が要請されたのです。

6月25日にはこの手の問題では聴いたことの無い6日目突入となり、 この時点では徐々にでもその状況が明らかになっては来ました。

発生の翌々日の2012年6月22日午前中の時点で トップページには状況を説明するページへリンクが貼られていた状態に過ぎなかったものが この時にはファストサーバ社ホームページトップページは その殆んどを障害関連の情報に占められており、 フリーダイヤルも2つ設置され、日中は土日問わずに受付されるものとなっていました。

このサポート体制を一方で復旧作業を行いながら維持するのは並大抵ではない筈です。 これを受けて2ちゃんねるには ファーストサーバが謝罪対応係を時給1000円で募集 「専門知識は不要です」 なるスレッドが立てられました。 ことの真偽は確かめようがないのですが、 どうにも虚構新聞のような求人情報が以下引用する如くそこには記されたのです。

お世話になります。フルキャスト梅田支店です。
期間限定!コールセンターのお仕事が入って参りました。

≪詳細≫
最寄駅:東梅田駅より徒歩3分
期間:6/26(火)~2週間程度予定
※6/27(水)開始の可能性、期間も1週間になる可能性あり
勤務日程:シフト制
※週3日以上必須
勤務時間:9:00~22:00の間でシフト制(9-18時、13-22時、9-13時、18-22時等)
時給:1000円
業務内容:サーバー障害に関する問い合わせ対応(対応範囲は限定されておりますので、専門知識は不要)
条件:電話応対可能な方
週3日以上ご就業可能な方

被害拡大を物語るお詫びページの拡張

25日昼過ぎの時点での障害の大きさはファーストサーバ社に用意された 6/20に発生した大規模障害に関するお詫びとお知らせ に於ける 更新情報一覧 を一瞥するだけでも痛いほどに分かるものとなりました。 それは以下のように時系列で対応が謳われたものですが、 効果的な手は一切打てていないことが判然するものでもありました。

  • [2012/6/25 11:00]:【重要】「エンタープライズ3・シリーズ」緊急メンテナンスのお知らせ
  • [2012/6/25 9:30]: 障害専用緊急フリーダイアルを増設いたしました。
    以下の2つの電話番号にて、お問合せを受付しております。
    【 0120-353-024 】 【 0120-061-112 】
  • [2012/6/25 8:30]:「大規模障害に関するFAQ」を公開しました。
  • [2012/6/25 2:00]:「大規模障害の概要と原因について(中間報告)」を公開しました。
  • [2012/6/24 22:00]:現在、更新はありません。
  • [2012/6/24 19:30]:【重要】「エンタープライズ3・シリーズ」緊急メンテナンスのお知らせ
  • [2012/6/24 12:00]:「障害の対象及び対象範囲以外のサービスに関するご報告」を公開しました。
  • [2012/6/24 10:00]:現在、更新はありません。次回更新は6/24 12時を予定しています。
  • [2012/6/23 22:00]:本日の更新予定はございません。次回更新は6/24 10時を予定しています。
  • [2012/6/23 17:10]:6/20に発生した大規模障害に関するお詫びとお知らせを公開しました。

これらは障害発生時の20日でもなく、 深刻な事態が判明した22日でもなく、 2012年6月23日以後の情報です。

25日時点の被害状況

実際の被害者が何処であるかも注目されるのは当然でした。 1-issue.comには6月23日に 前代未聞の大惨事!ファーストサーバ死亡のお知らせ として被害を被っただろう企業を管理者の方が目視で調べ以下のように列挙しています。

  • 小林製薬:http://www.kobayashi.co.jp/info/120621.html
  • 長野電鉄:http://www.nagaden-net.co.jp/
  • 学士会館:http://www.gakushikaikan.co.jp/
  • 109シネマズ:http://109cinemas.net/
  • LOFT PROJECT:http://www.loft-prj.co.jp/
  • 薬事日報:http://www.yakuji.co.jp/entry26779.html
  • スーパーマーケット ヤオコー:http://www.yaoko-net.com/
  • マルカン:http://www.marukan.org/
  • 株式会社ダイセル:http://www.daicel.com/
  • 株式会社:喜信堂:http://www.kishindo.co.jp/
  • nikoli.com:http://www.nikoli.com/
  • カルディ:http://www.kaldi.co.jp/
  • 海遊館:http://kaiyukan.com/
  • 公益財団法人 日本郵趣協会:http://yushu.or.jp/
  • クラウド:http://www.hs-crowd.co.jp/
  • あらしまやメダカショップ:http://a-medaka.jp/
  • ライトマーケティングジャパン:http://lightmj.co.jp/
  • 霧島食品工業株式会社:http://www.kirishima-ltd.co.jp
  • 快適ペット生活:http://www.kaiteki-pet.com/
  • ワンピの魔法:http://onepiece-rental.net/
  • アクア・ライズ:http://www.e-aquarise.net/
  • 大津市市民活動センター:http://otsu-npovol.jp/
  • プロポーズフラワー:http://www.proposeflower.jp/
  • 明海大学:http://www.meikai.ac.jp/index.html
  • 静岡産業大学:http://www.ssu.ac.jp/index.html
  • 札幌良い住宅.jp:http://www.iesu.co.jp/ghs/
  • 太陽光発電普及拡大センター:http://www.j-pec.or.jp/
  • メガネストアー:http://www.meganestore.co.jp/
  • スタイル工房:http://www.stylekoubou.com/index.htm
  • 石田ホーム:http://www.ishidahome.co.jp
  • 株式会社SRA:http://www.sra-japan.com
  • なめこぱらだいす:http://namepara.com/

記事には被害状況が併せ掲載されています。 気になる方は上記紹介リンクをご参照下さい。

上に被害者の1社に数えられる LOFT PROJECT には25日時点にアクセスすれば白い背景に黒いテキストのみの 俄か作りのページに以下

弊社が使用しておりましたサーバ(ファーストサーバ)にて障害が発生しWEB・メール・データベースなどのデータが消失致しました。 ファーストサーバによると短期間でのデータ復旧は不可能であることが判明いたしました。 お客様、関係者の皆様にはご迷惑をおかけして申し訳ございません。 現在、各店舗ページは復旧しております。
なるお詫び文が顧客に向けて発せられていました。 これを受けて阿佐ヶ谷ロフトでは ファーストサーバ データ消失オフ「データはどこへ消えた?」 なるイベントを企画しているのですから なかなか転んでも只では起きない逞しさが感じられたものです。 出演者は 集まって頂いた被害者の皆様、ロフトグループウェブ担当、ほか と洒落たものになっています。

被害件数5,698件

この前代未聞の被害を実社会にも齎したネット上の大障害は オンラインメディアにも挙って取り上げられました。 2012年7月25日にはASCOO.jp×TECHが 詳細未定なものの損害賠償についても言及 ファーストサーバ、大規模障害での顧客データ復旧を断念 を配信しており、その被害件数に言及しました。 此処に障害のあったサービスの契約顧客数は 5,698件 と伝えられました。 ファーストサーバ社の利用者約5万件から鑑みて今回の大規模障害に因って その利用者の1割がデータを失う被害にあったことになったのでした。

一般メディアにも取り上げられる

発端から拡大する一方で一向に収束をみることもなく 遂に一週間の時を閲してしまいました。 ことの重大さに、翌6月26日には遂に一般メディアも取り上げることとなりました。 毎日.jpには データ消失:5698件の復旧不可能 ヤフー子会社 がニュースとして配信されました。 記事には一般向けにレンタルサーバーなどの解説をした後、 被害企業が幾つか個別に取り上げられます。

先ずは 109シネマズ についてその運営会社の東急レクリエーションが 損失額が見積もりにくい 困惑している様子を伝えます。 被害者にも前代未聞のこの事態に対応の難しさが覗える状況です。

大阪の水族館 海遊館 一時ホームページが閲覧不能になったのは勿論、 人気のあった職員ブログ 海遊館日記の内容が消失したとあります。 復旧は難しいとされていますが、 アクセスしてみると何とか26日夜の現時点では 有る程度元に戻せた様子が覗えます。 良かったですね。

そしてとうとう懸念していた市民生活にも影響が出てしまいました。 大津市市民活動センターでは市民グループなどが使う会議室の予約状況が消失しました。 他にも貴重なデータなどが消えたのに対し ファーストサーバ社からは案の定 自力再構築 の旨メールで促されるのみであったことも伝えてくれます。 Webに不慣れな担当者でなくとも天を仰ぐ処です、お察しします。

熟練ユーザの対応

毎日.jpには他に1社 小林製薬 も事例として取り上げられます。 ブランド毎の製品紹介サイト、携帯電話用サイトのデータを消失したとのことですが、 バックアップデータで復旧させた旨、記載されています。 実際、当該社が被害企業であり、実に迅速な対応で自力で障害から復旧した事実は 早い時期からネット上でも話題になっていました。

小林製薬の対応についてはZDNET Japanの2012年6月22日の記事 ファーストサーバ障害:ユーザーの小林製薬「影響を測る術がない」 に早、詳細が記されました。 追記にはその日の午後には復旧終了の言及もあります。 同社公報の 今回(の障害で)どのくらいの影響があったのか、 (インパクトを)測る術を持っていない なる言に今回の事案の前例を見ない深刻さが集約されています。 ファーストサーバ社に対応の余裕が無いのを見る余裕すらある 熟練のインターネットユーザーとも言える同社ですが、 それにしてこの言であるのです。

契約更新は恐らく有り得ないでしょうが、 損害賠償などの交渉も孰れ行われるでしょう、 その知見をまたネット上に配信してくれれば 吾人が得難い学びを受けられるものと期待されます。

また早い時期から大手ユーザーとして見られていた 日本発グループウェアの雄、IT企業の サイボウズ株式会社 の被害も大きいものと見られます。

サイボウズのホームページトップからは ファーストサーバ様 インターネットサーバー障害について が2012年6月22日に公開、6月25日に更新された状態で用意されています。 矢張りファーストサーバ社と連携する サイボウズ Office 9 for ASP には甚大な影響があったようです。

サイボウズ公式サイトには被害状況と対応が淡々と綴られますが、 外部には第三者的な態度でその被害状況を 肌身に感じさせる雰囲気を醸しだすページもありました。 News U.S.が6月25日配信した ファーストサーバー障害でサイボウズOfficeデータ消失、大損害、倒産企業続出か!まさかの賠償なし、集団訴訟へ!前代未聞の障害情報まとめ(2) がそれで、 逼迫した状況が生々しく伝わるページになっています。

以上、2012年6月26日深夜、発生から一週間するも尚、 情報化社会時代に於けるインターネット利用について多くの教訓を残しつつ、 大規模障害は今現在も、進行形で推移しています。