日本でネットショップと言えば以下挙げる処が三大サイトとして名を馳せているでしょう。
- 楽天市場
- Yahoo!ショッピング
- Amazon.com
この三大サイトだけでも物流に与えるインパクトは大きいものと思われますが、 更にネットショッピングの当たり前の様に普及した日本では 他の多くのネットショップも扱い量を増やして来ています。
中にも上記三大サイトに続くと思われるのが女性向け衣料品を主とするカタログ通販が中心の 以下に挙げる三サイトになろうかと思います。
- ベルメゾンネット
- ベルーナ
- ニッセン
これら三サイト孰れも現在では女性向け衣料品に留まらぬ幅広い商品を扱うようにもなりました。 扱い量も増えると共に競争の激しさを増している中、 自社ネットショッピングに最適化したiPhoneアプリを無料で提供し始めましたのが、 以下にリンクを貼るサイトです。
ベルメゾンネット其のサービスと言うのが以下にリンクを貼るiPhoneアプリです。
運営企業の千趣会では2011年10月31日にニュースリリースとして 下のPDFファイル(301kB)を配信しています。
ベルメゾンネット“注文番号検索アプリ”を配信開同リリースが配信されたことはMarkeZineの2011年10月31日記事 千趣会、商品の注文番号入力に特化したiPhoneアプリをリリース など、幾つかのオンラインニュースサイトで扱われていますし、 リリースをWeb頁として其の儘見られるアドタイの2011年10月31日記事 ベルメゾンネット“注文番号検索アプリ”を配信開始 も公開されています。
今回千趣会から提供される無料iPhoneアプリは Androidスマートフォン版は既に10月12日に先行して提供されていたもので、 これで凡そ利用者のスマートフォン環境はカバー出来ることになります。 このアプリの評価したいところは利用者の利用シーンを想定して作られていることです。 それは以下等とされています。
- カタログを見ながら携帯電話で、実際の購入者が投稿した商品評価(レビュー)を見て情報を得る
- カタログを見ながら携帯電話を注文端末として使う
即ち自社顧客の内 携帯電話を上手く利用するセクターの特徴としてカタログを併用することを把握している のです。 このアプリはその人々向けに特化して構成されています。 詰まりその類の人達が利用すれば必ずやベルメゾンネットでの商品購入に便宜が図られるというものです。
本ブログ運営者は正直このアプリのインターフェースを見た時冗談かと思いました。 其処に用意されているのはテンキーボードと入力窓のみだからです。 これ程人を突き放したインターフェースも無いだろうと思った訳ですが、 手元に綺麗に印刷された通販カタログがあるとなれば話は別です。 この形態を思うだに凡そ 紙媒体とスマートフォンアプリは実にシームレスに連携が図られ スマートフォンにはお気に入りから購入履歴からデータが取り込まれ、 実にスムースに購買アクションへと繋がるでしょう。
このアプリは競争の激しいネットショップの中で勝ち抜くために 千趣会の考え出した生き残り策とも言え、或る程度成果を上げるのではないかと考えます。 翻ってネットショップを考えるに、 競争の激しさの中を勝ち残るにはこのようなツールを無料で提供するなどして 利用者の便宜を図ることがこれからは必須となるでしょう。 また翻ってiPhoneアプリ、Androidアプリを考えるに、 それ単体のみで使われるアプリではなく、 このように一つの生態系の中で役割を果たさせるのは とても重要なアプリとしての一つの立ち位置であると思います。 アプリ開発を担当する場合、特にアプリ企画を担当する場合、 はこの様な活用法をも考慮に入れた上で望みたいものです。
追記
(2018年3月7日)
本記事にカタログ通販が中心の三サイトを列挙したのが6年半前、
其れより現在へ至って三社三様、ネット対応と其の齎す業績に明暗が別れた様相を呈している様です。
第3位に挙げた ニッセン については業績悪化から債務超過の可能性を孕む事態を招き遂には セブン&アイ・ホールディングス へ経営支援を仰ぎました。 其の経緯は ネットショップ担当者フォーラム に2016年8月9日付けで瀧川正実氏の文責を以て配信[※1] され、詳細が記されています。 興味深いのは巷間 ネット対応への遅れ が取り沙汰されるものの、 主因は其処にないだろうと思われるのは以下引用にある様に 早くからのネット化の施策が見られるからです。
ニッセン関連事業(カタログ売上、ネット売上、BtoB売上、その他)の売上高は2011年通期の1343億円から、2015年通期には842億円に減少。客数の減少とともに売上高は急速に落ち込んだ。
こうした状況について、“ネット化への遅れ”を指摘する声があるが、2015年決算では、ニッセン売上の約67%がネット経由。ニッセンは2000年、本格的にECを開始。着実にEC化率を高めてきた。スマホ対応も進め、2015年時点では売上高の3割強をスマホ経由が占めている。
現在では ニッセン は セブン&アイ・ホールディングス の傘下となっています。
第2位に挙げた ベルーナ(Belluna) については頃日の絶好調が伝えられる記事[※2] が日本流通産業新聞に2017年5月24日付で配信されています。 記事には連結業績の増収増益が伝えられ、 総合通販事業の増収こそネット販売が牽引したもの、と記されています。 加えて今年2018年の連結業績予想[※3] も増収増益、共に過去最高の数字を示しています。
そして第1位に挙げた ベルメゾン については実に辛辣な記事[※4] が東洋経済に 倉沢美左 氏の文責を以て2018年3月6日に配信されました。 記事には運営元 千趣会 の経営について様々な分析、考察がなされますが、 一言に同社の状況を約めれば、 冒頭に以下引用する如く、 実に憂うべき状態である様です。
女性向け通販「ベルメゾン」などを展開する千趣会が惨たんたる状況に陥っている。
本記事配信時にはアプリのユーザーを突き放したインターフェースに驚きを禁じ得ませんでしたが、 気分を取り直し印刷物とのシームレスな連携など好いと思われた処を抜き出して記事にした感があります。 しかし矢張り考えてみればスマホで完結しない場合、 其れは特にITに明るくない女性ユーザーからは疎んじられるものであったのかも知れない、 と反省頻りです。
ベルーナこそネット販売に首尾良く対応がなり頃日の良好な業績を保ち得ましたが、 ニッセンは早くからネット対応を模索していたにも関わらず身売りの事態を招きました。 ネット販売はカタログ通販に無視出来ない業態であるのは分かっていながら、 其々の業績に於いては明暗が別れたのでした。 そして本記事にメインで紹介した如く、 逸早くスマホアプリを投入しデジタル化に決して無関心ではなかった千趣会此処に来て遅れを取るとは、 決して其れのみに原因が帰結し得る訳ではありませんが、 デジタル化、ネット化、スマホ対応とは 一筋縄では行かないものであるのが分かります。
追記
(2018年3月24日)
2018年3月7日の追記に三社三様にも、ネット対応が首尾良く運び近年好業績を上げる
ベルーナ(Belluna)
でさえどうやら安閑とはしていられない状況であるのは
ベルーナWebサイトの商品・サービスに関する大切なお知らせページに2018年3月15日付けで掲載された
送料改定に関する重要なお知らせ[※5]
を見ても分かります。
以下に其の内の配送料値上げの理由に関する一文を引用しましょう。
この度、商品をお届けする際の送料価格を一部、改定させていただくことになりました。
近年の宅配業界では、配送件数の増加及び人手不足の問題が起きており、全国で配送運賃が 高騰しております。弊社グループとしましては、お客様にご負担をおかけしないよう、できる 限り内部でコストを吸収し、送料価格の維持、増加幅の抑制に努めてまいりましたが、現状の 送料価格を維持することが大変困難な状況となっております。
つきましては、心苦しい限りではございますが、下記事業にて送料価格の改定をさせていた だきます。
此れを受けて昨日、 2018年3月23日にネットショップ担当者フォーラムに記事[※6] が共有されたのもネットショップ関連のニュース配信サイトとして無視出来ないからでしょう。 ネットショップに取って宅配業者との関係、配送料は大きな問題に他なりません。 昨今、宅配業界最大手ヤマト運輸とネットショップ最大手アマゾンとの確執に見られる如く 宅配便の絶対数の増加と人手不足に因り配送料見直し喧しい世相を呈しています。 好調ベルーナも此れに無縁ではいられない様子が知れます。 ネット対応が首尾良く運んだとしても決して其の地位に胡座を掻いていられはせず、 依然として企業努力は重ね続けなければ他社に抜きん出た其の座を滑り落ちてしまうのは歴然たります。
参考URL(※)- ニッセンの業績不振を招いた「価格訴求」。なぜお客は離れたのか?(ネットショップ担当者フォーラム:2016年8月9日)
- ベルーナ17年3月期/売上高10.9%増/総合通販順調で過去最高額(日本流通産業新聞:日流ウェブ:2017年5月24日付)
- ベルーナ (ベルーナ) 【9997】(株探:決算/業績・財務推移 [通期/半期/四半期]:2018年3月7日)
- 大赤字!通販「ベルメゾン」が苦戦する理由(東洋経済オンライン:2018年3月6日)
- 商品・サービスに関する大切なお知らせ:送料改定に関する重要なお知らせ(株式会社ベルーナ:平成30年3月15日)
- ベルーナが総合通販の送料無料を廃止へ、「現状の送料価格の維持は大変困難」(ネットショップ担当者フォーラム:2018年3月23日)