普段の生活圏内から外へ出るにはなかなか困難の伴った江戸封建時代ならいざ知らず、 今や地図は生活に欠かせないものとなっています。 また同じく軍事政権だった江戸幕府が軍事情報である地図など公開出来る筈もありませんから ますます庶民はその正確なものは目にする機会はありませんでした。
元来吾人の生活に欠かせなければインターネット上に於いても普及は進むもの、 それ以前もインターネット上には地図サービスは提供されていましたが Googleマップを嚆矢とする高度な情報処理を簡便に利用出来るオンラインマップは 一度使えば再びその無い世界には戻れないでしょう。
基盤地図情報とは?
その地図データは如何に作成されているか? 作成には伊能忠敬、間宮林蔵の偉大な先人の地図データ作成時から変わらず、 何某かの基準が必要となります。 偉人の先業からも試行錯誤が重ねられそれらは次第に形を成して来ました。 大凡基準が無ければ海岸線も産まれず国土なども定義しようがありませんし、 となれば山の高さだって湖の深さだって測れません。 大体が東西南北に細長く配置されているかのように見える お馴染みの日本図だって産まれようがある筈もありません。
この基準に日本国家として…
情報化社会の中で名前を付けたのが 基盤地図情報 であり、それは平成19年8月29日に施行された、 地理空間情報活用推進基本法(平成19年法律第63号)第2条第3項に定義されている用語でもあります。
勿論法制化されただけあって国家としても閲覧サイトが用意されており 本ブログでもお馴染みの国土地理院サイト内に 基盤地図情報サイト があり基盤地図情報の言葉の説明としても 基盤地図情報とは なるコンテンツが用意されています。
自由に閲覧可能となった標高詳細データ
上に詳解した国土地理院サイトから基盤地図情報が閲覧できるのですが つい先日、2012年3月29日に同じくダウンロードページ 基盤地図情報の閲覧・ダウンロード から基盤地図情報に基づく測量データがダウンロード可能になりました。 それがWeb上からも 基盤地図情報(数値標高モデル)5mメッシュ(標高)を用いて作成した精密基盤標高地図 で閲覧可能な5m単位の精密標高データです。
今回国土地理院が公開したのは、 日本国沿岸部及び大河川近くを中心とした134,000平方kmものに及ぶ詳細な標高データです。 この測量には標高差を数cm単位で判別可能なカメラで航空機から撮影したものに基づいています。 これを地図情報と組み合わせることで、5m四方のメッシュで標高が色分けされた地図が閲覧可能となる寸法です。
今回のデータ無償公開は税金が投入されたものとは言え 地図データが有償で馬鹿にならない出費を余儀なくされた頃とは隔世の感があります。 しかも個人や通常の法人レベルでは到底不可能な測量レベルで採取されたデータです。
これは災害対策に於いても重要な意味を持ちます。 だからこそ貴重な税金を投じる意味もあると言うものでしょう。 また去年2011年の未曾有の東日本大震災の影響で 作業に拍車が掛かったことは否めません。
災害対策に於ける詳細標高データの意味
東日本大震災に於いては津波が大きな被害を齎しました。 一旦大きな地震が起これば津波が次なる魔の手を伸ばすことが吾人に目の当たりになったのです。 地震国日本に於いて何処に居住しようと地震から逃れることはなりません。 即ち居住地選定に於いて津波の考慮は欠かせないものです。 実際に震災以降に住居を求められた方などは図らずも考慮せしめられたのではないでしょうか。
では其処がいったい海抜何メートルなのか? ミクロには今回公開されたデータはそれに応えてくれます。 そしてマクロには大きな被害の予想される地域の特定が可能になります。 そうなれば開発選定にあたっての重要な根拠となりますし 災害対策の公共事業に大きな予算を投じる根拠ともなるでしょう。
以上見てくれば基盤地図情報とそれに基づく詳細標高データは 災害対策には最早必須と言って過言ではありません。
変遷する地図データ
実は従来流布していた地図データも統一された基準に基づいてはいなかったようです。 従って大凡概観は掴めてもそれぞれに有する誤差は排し得ないものでした。 そのため本ブログの2012年1月17日の記事 Googleマップの登場とGIS に於ける GIS(地理情報システム) での情報処理では相互に基準を変換するなどの負荷があったとのことです。 例えれば土台北海道と九州で通貨単位が異なっては面倒でしょうがないことです。 秦の始皇帝ではないですが度量衡の統一は国家として当然の役務です。 その基準を日本国として統一したことは大きいでしょう。 不動産屋さん毎に異なる標高値に惑わされることもなくなりますね。
またこの基準は一度決めたからと言って未来永劫同一ではないことも頭に入れておく必要があります。 上に紹介のダウンロードページに於いて本日2012年4月15日時点で最下部を見れば 平成20年に発生した岩手・宮城内陸地震に因って測量成果公表を停止している原因が 位置が大きく変動していることが想定される基準点が存在するとこことで、 その詳細が説明されるページ 「平成20年(2008年)岩手・宮城内陸地震」に伴う基準点測量成果の取り扱いについて へのリンクも設けられています。 これから基準点は随時変わることが分かります。 地球は生きているのです。