iモードからdメニューへ~ドコモ課金モデルとGoogleウォレット

日本では余り馴染みがありませんが Google社の決済サービスにGoogleチェックアウトがありました。 2006年6月30日に開始されたサービスで登場から暫く経た Gigazinに当時の記事が2006年12月10日付けで 知られざるGoogleの決済サービス「Google Checkout」とは? として残されています。

決してGoogle社も力を注いでいたとは言い難い決済サービスですが、 時代が進むに連れ、具体的に言えばGoogle社が基本ソフトウェアである Android(アンドロイド)を提供するスマートフォンの普及が進み、 スマートフォンにて決済を其の場にて行う利用者の行動もごく普通のものとなれば、 事態は大きく転換しつつあります。

その状況を鑑みたものに違いないでしょう、 そのGoogleチェックアウトとGoogleの新サービス Google Wallet(グーグル・ウォレット) が統合されたニュースがガジェット通信の2011年11月18日付の記事 Google、『Google Checkout』を新しい決済サービス『Google Wallet』に統合 として配信されています。

Googleウォレットとは 本ブログでも2011年9月19日の記事 Google Wallet ≠ 日本のおサイフケータイ に起こしたように日本のおサイフケータイと求める機能は同じなれど、 その実現手法が異なる互換性のないものです。

さて、NFC機能を搭載したスマートフォンで利用可能になるGoogleウォレットは決済も可能である、 と聞けば、何処かで聞いたことのあるシステムの気がします。 それは…

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一時代を築いたNTTドコモのiモード公式コンテンツです。 このサービスに於いては公式コンテンツに登録されれば そのコンテンツを利用するユーザーに課金を施す際、 ドコモが電話料金徴収時、決済を代行してくれる為 非常にサービス提供ベンダーに人気が出たものです。 各ベンダーは公式コンテンツに登録されようと それはそれは悲しくなるほど競い合ったものでした。

しかし今や時代は ガラパゴス携帯 (2011年6月9日記事 携帯電話のいろいろな呼び方―ガラパロイドって何? 参照)からスマートフォンへ大きく移り変わらんとしています。 そしてその基本ソフトウェア技術を有していないNTTドコモは 最早iモード体制を維持することが叶いません。

此の時ドコモが捻り出した手法が spモードであり、dメニューでした。 しかしそれは嘗てのiモード、iメニューの如き隠然たる権力を発揮出来る場ではなくなっています。 他社の基本ソフトウェアに頼らざるを得ないからです。

このことを如実に示すべく 日経ビジネス 2011年12月19日号15ページを22日にオンライン上に転載したコンテンツ iモード「大移動」の死角 が配信されました。 dメニューの公式登録コンテンツは 2011年11月現在で700社で約3600サイトに留まります。 それに対してiメニューではどうか、引用してみましょう。

iモードは成長のピークは過ぎたとはいえ、いまだに約2万3000の登録サイトがあり、ユーザーは5000万人に上る。このまま従来型携帯からスマートフォンへのシフトが進むとどうなるか。「コンテンツ会社がドコモのサービス基盤を使ってコンテンツを提供し、ドコモが課金代行をして手数料を得る、という十数年かけて培ってきたiモードの生態系がみすみす消滅してしまう」(ドコモ関係者)。
そして此処に記されるiモード生態系の核を成すとも言える 課金代行もAndroidと言うGoogle社の基本OSの上で稼動する以上、 Google社の意向を無視する訳には行きません。 必ずや影響があると考えられる処に、 今回のGoogleチェックアウトとGoogleウォレットの統合があるのです。 其処では近距離通信を実現する企画も最早おサイフケータイ(Felica)ではなく世界標準の NFC が採用されているのです。

この一事を以てしてもNTTドコモの戦略が誤っていたことが判明します。 若しかしたら戦略とは言えない抗えない潮流に流されただけなのかも知れません。 基本ソフトウェアを他社に委ねるべきであったのか? 否それ以前に従来の携帯の形態、所謂フィーチャーフォンから iPhoneタイプのスマートフォンに移行すべきだったのか? 孰れ、ドコモに選択肢は用意されていなかったようにも思えます。 ドコモに財務的にも、時間的にも、技術的にも、 全く問題はなかったと思えるにも関わらず、です。 それは大きな成功から必然的に導かれるイノベーションのジレンマなのかも知れません。